危険な脂肪肝

危険な脂肪肝

  肝臓は、糖や脂肪を取り込んでエネルギーを作るところです。エネルギーを作る場所は、過剰な栄養の取り過ぎや糖尿病・高血圧などの生活習慣病があると、入ってくる脂肪の量が非常に多くなってきます。エネルギーを作っても余ってしまい、余った脂肪が肝臓に溜まることで、脂肪肝になります。運動不足もエネルギーを消費しないことから脂肪肝に繋がります。
 アルコールを多量摂取し脂肪肝になるのは皆さんご存じかと思いますが、最近は生活習慣病が非常に増えており、それに伴う脂肪肝が増えてきています。お酒をあまり飲まないにも関わらず脂肪肝になり、そのうち約25%の人が肝硬変や肝臓がんになっていく、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)という病気があります。自覚症状がないので、気が付いた時には肝硬変になっていた、肝臓がんが出来ていたということがしばしば起こります。
 脂肪肝の特徴として、男性は20~50歳代の比較的若い方に多く、3人に1人は脂肪肝であることがわかっています。若い人が運動不足にも関わらずたくさん食べて脂肪肝になっているのです。女性は、閉経後エストロゲンが低下してくる頃に太りやすく、脂肪肝に、進行するとNASHになりやすい傾向にあります。
 まずは脂肪肝であるかどうかを腹部超音波検査で調べ、脂肪肝の場合は進行しているかどうかをFIB4-index(4つの指標である「年齢・血小板・AST・ALT」を計算式に入れ計算する方法)である程度予測することが可能となります。
 脂肪肝と診断されたら、肥満がある場合は、目安としては7%体重を落とすことを指導します。糖尿病やコレステロールが高い人はそれらの治療をすることで脂肪肝も改善します。食事は、果物や麺類、パン、ごはんなどの糖質を控えるだけでも改善がみられます。また、週2回30分以上ウォーキングなどの有酸素運動を心がけてください。時間がない方は、短時間のランニングでも効果はあるので、出来ることから始めてください。筋肉の低下と脂肪肝の進行は関連していることがわかっています。筋肉をしっかり作ることで基礎代謝があがり、たくさん食べても脂肪肝になりにくくなるので、筋肉を作ることも大事です。
 コロナ禍で、エレベーターではなく階段を使用する、外食が減った、重症化しないために食生活に気をつけるなどの理由で、痩せて脂肪肝がよくなる方もいる一方、マスク着用やソーシャルディスタンス・外食が出来ないストレスでより食べてしまった、運動の機会が減った、など様々な原因で脂肪肝になる人が増えてきています。脂肪肝がある人は、コロナに罹った時に重症化しやすいというデータが発表されました。極力生活を改善するように心がけてください。
 脂肪肝やNASHが気になる方はご相談ください。

執筆者

内科 副部長  川中 美和
専門医・指導医 日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医・中国支部評議員/日本肝臓学会専門医・指導医・評議員/ 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医/日本消化器病学会専門医・指導医・財団評議員/死体解剖資格認定/日本医師会認定産業医
専門領域・得意分野 肝臓病の診断と治療/肝癌の治療、NASHの診断と治療/肝生検・超音波検査

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