新型コロナウイルス感染症の病原体「SARS-CoV-2」では、ゲノム塩基のどこかに約2週間に1回の頻度で変異が起き、そのためにウイルスのタンパク質を構成するアミノ酸に変化が起こります。変化の起こったウイルスが伝播するようになると「変異株」と呼称されますが、スパイクタンパク質に関連したアミノ酸配列の変化は、ウイルスの感染しやすさ(伝播性)やワクチンで誘導される抗体の中和作用に影響が出るとされています。
従来のタイプよりも感染しやすい、あるいはワクチンの予防効果が低下する可能性が危惧される変異株が世界で次々と報告されており、アルファ株、デルタ株、オミクロン株などと呼称されます。
ウイルスの感染しやすさ(伝播性)が高まって患者数が急増すると、医療逼迫や医療崩壊につながります。従来は患者が少なかった小児への感染や、学校や保育所でのクラスター発生も起こりました。また、ウイルスの抗原性変化による中和抗体活性の低下は、ワクチンの有効性への影響に加えて、新型コロナウイルス感染症に一度罹ったことのある者が再感染するリスクが増大することも懸念されます。変異株への対策は、今後の最重要課題のひとつです。