筋肉を若返らせて健康長寿を目指しましょう

筋肉を若返らせて健康長寿を目指しましょう

   皆さん誰でも、「できるだけ長く健康で元気に暮らしたい」と、健康長寿を願っています。それを叶えるのに一番重要なのが「筋肉」です。加齢で筋肉が減少していくことを「サルコペニア」(ギリシャ語で「サルコ」は筋肉、「ペニア」は減少のこと)と言い、“骨格筋量の減少と筋力(握力)および身体機能(歩行速度)の低下”の3つの身体機能の低下がみられます。筋肉が衰えると、疲れやすくなったり、心身の活力が低下したり、要介護一歩手前の衰弱状態(フレイル)になります。しかし、筋肉は他の組織に比べると若返りやすいので、何歳からでもトレーニングをすることによってまた若返ってきます。これは90歳になってもいえることです。
 介護が必要になる発端は、自分の足で立ち上がったり、歩けなくなったりして移動ができなくなることからです。そのため、トイレに介助が必要になったり、お風呂に一人で入れなくなる、洋服の着脱ができない、自分で食事が食べられなくなる、そして最後には寝たきりの状態になってしまいます。自分の意思で立ち上がって行きたい所に、歩いて行けることが一番大事な基本動作となるため、その身体動作がうまくいかなくなる原因である筋肉の衰えが問題となってきます。
 衰えの原因は加齢です。年齢とともに特に下肢筋肉量は20、30歳から衰えていき、70歳になると若い年代の30%位になってしまいます。ペットボトルの蓋が開かなくなったり、横断歩道が青信号で渡りきれなくなったり、疲れやすくなったり、腰が痛くなったりするのも筋肉の衰えが原因だといえます。
 筋肉と骨が連動していることを「筋骨連関」といいます。骨が若返って元気になると、筋肉も若返ってくる、筋肉が若返って元気になると、骨も若返ります。そのための基本はまず骨が重要で、骨が衰えてくると筋量の衰え(サルコペニア)が始まり、衰弱状態(フレイル)にもなります。ただ逆はなく、フレイルが原因で骨が悪くなったり、筋肉が原因で骨が悪くなったりということはあまりありません。そのため、身体を動かす臓器である運動器の加齢変化の主体は骨の衰えである骨密度の低下から始まります。
 健康寿命を延ばす方法としては、筋トレが一番効果的です。筋肉は48日で半分入れ替わります。10年前に一生懸命筋トレをしたら、その時の記憶が筋肉細胞の中の核内に残ります。その残っている核が10年たってもまた過去の機能が生き返るので、新たなトレーニング効果を得るのに、以前は3年かかっていたことが1年で効果が出るなど短縮効果があるのです。
 トレーニング方法として一番簡単なのは、目を開けて壁などを支えにして片足を5~10センチ上げて片足立ちをする“開眼片足立ち”(片足1分間ずつを3セット)です。これはバランス感覚を鍛えることができます。次に下肢筋力をつける“スクワット”(毎日10~15回)です。ご自身の体力に応じて低い位置まで腰を落とさない“ハーフ(ゆる)スクワット”でも構いません。そして下肢の柔軟性・バランス能力・筋力に効果のある左右の足を交互に大きく前方へ踏み出す“フロントランジ”(片足10秒ずつを2セット)です。また、かかとを上げて下す“ヒールレイズ”も下腿筋肉のふくらはぎを鍛えることができます。
 ぜひ皆さんも自立して暮らせる「健康寿命」をできるだけ長く保つために「筋肉を若返らせる」ことを怠らないようにしましょう。

執筆者

産婦人科 特任部長  太田 博明
専門医・指導医 日本産婦人科学会専門医/日本女性医学学会女性のヘルスケア専門医/日本骨粗鬆症学会認定医/日本抗加齢医学会専門医/日本東洋医学会漢方専門医
専門領域・得意分野 女性医療(骨粗鬆症/サルコペニア/ロコモティブシンドローム/フレイル/メタボリックシンドローム/抗加齢医学/終末糖化産物/婦人科腫瘍/更年期障害/閉経関連泌尿生殖器症候群など)

メディカル
インフォメーション 検索

診療科・部門で探す