よくわかる脳卒中のお話・・・その13

更新日:2017/12/04

眼と脳神経

血圧低下による失神
意識消失。この言葉から重篤な疾患をイメージしてしまいがちですが、その原因は多岐にわたります。

意識消失はおおまかに脳自体に原因があるものと、血圧低下によるものとに分類されます。脳自体に起因するものとしては、てんかん発作や脳の大きな血管の一過性の閉塞による意識消失が挙げられます。

意識消失というと私たちは真っ先に脳の病気を考えますが、実際はそれ以外の原因によるものが大半を占めます。

血圧低下に起因するものは失神と呼ばれます。全身の血圧が低下することにより二次的に脳の血流が減少し、一過性に意識が消失します。失神の原因はさまざまですが、主に心臓に原因があるものと、末梢の循環不全に起因するものとに分けられます。


心臓性失神
心臓性の失神は徐脈や頻発症などの不整脈により心臓の拍出量が低下し、その結果として失神をきたします。突然死につながることもあり、早期の診断・治療が必要です。

 
末梢性の循環不全による失神
次に、末梢性の循環不全による失神について説明します。これは末梢血管の運動をつかさどる自律神経(迷走神経、交感神経)が充分に機能していないことにより、一時的に血圧が下降して起こります。

冒頭で述べたような失神は、迷走神経の反射(受けた刺激が大脳を介さないで神経中枢から筋肉などに反応となって伝わること)が原因です。俗に、「脳貧血」といわれているものです。長時間の起立、恐怖や不安、疼痛などによって誘発されます。さらに、脱力、顔面蒼白、発汗などの症状を伴います。


起立性低血圧による失神
そのほかにも、交感神経の調節不全によって起こるものとして、起立性低血圧が挙げられます。いわゆる立ちくらみです。

通常私たちは立ち上がる際、交感神経が末梢血管を収縮させ血圧をコントロールします。しかし、交感神経の調節機能に異常があると、このコントロール機能が充分に作動せず失神をもたらします。年を重ねることや糖尿病などが原因となります。

みなさんが病院を訪れる段階では、すでに意識は回復しています。正確な診断を下すために、倒れたときの詳しい状況説明が必要となります。発作の時間及び持続、何をしていたときか、そのときの姿勢などを説明してください。可能な限りその場に居合わせた人も同席してください。


一言で意識消失といっても、さまざまな原因が考えられます。広範囲な検査、治療が可能な総合病院を受診してください。


 

次回は、けいれんについて、詳しくご説明します。

執筆者

脳卒中科 副部長  井上 剛
専門医・指導医 日本内科学会認定内科医/日本脳卒中学会認定脳卒中専門医/脳血栓回収療法実施医
専門領域・得意分野 神経疾患全般/脳卒中全般

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