病理科

3.細胞診検査

細胞診検査とは、文字通り細胞を顕微鏡で観察する検査です。しかし、細胞は透明なためそのままでは詳細な観察が出来ません。そこで、種々の検体をスライドガラスに塗抹し、アルコールで固定後、染色して始めて顕微鏡で詳細な観察が出来るようになります。
細胞診検査は主にがんの判定を目的として行いますが、その他一部の感染症や性ホルモンの状態などが分かります。がんの判定は正常細胞との形態的な隔たり(異型性)を比較して行います。それには、専門的な知識と経験が必要です。日本臨床細胞学会が認定した医師を細胞診専門医と言い、臨床検査技師を細胞検査士と言います。
細胞診で扱う検体の採取方法には大きく分けて、剥離細胞診(喀痰、尿、胸水、腹水、心嚢液、脳脊髄液、胆汁など)、ブラシや綿棒などを挿入し病変部を擦過する擦過細胞診(子宮頸部・体部擦過、気管支擦過、胆管擦過、膵管擦過など)、細い針を病変部に刺し吸引して細胞を採取する穿刺吸引細胞診(乳腺、甲状腺、リンパ節、肝、膵など)、および採取された組織をスライドガラスに押しつけて塗抹する捺印細胞診があります。
当院では年間約4,000件(その内、約半数が婦人科材料)の検体数を取り扱っています。それらの検体を細胞診専門医2人と細胞検査士3人で行っています。
下記に実際の細胞像を示します。
  • トリコモナス腟炎(子宮頸部綿棒擦過)
    矢印で示すトリコモナス原虫を認めます。
  • ヘルペス感染(子宮頸部綿棒擦過)
    水疱をつくるウイルスで、多核化やすりガラス状のクロマチンが特徴です。
  • コイロサイトーシス(子宮頸部綿棒擦過)
    コイロサイトの出現は、HPVウイルスの感染が疑われます。HPVは人に疣をつくるウイルスで、HPVの持続感染が子宮頸部癌の発癌に関与していると言われています。
    細胞の特徴は、核の腫大した異型細胞の核周囲に明庭(コイロサイト)が見られます。
  • 上皮内癌(子宮頸部綿棒擦過)
    上皮内に留まっているがんで、一番初期の段階のがんです。子宮がん検診を行うことで異形成(前癌病変)や上皮内癌などの初期の病変を発見でき、根治手術ができます。
    細胞の特徴は、円形で核と細胞質の面積比(N/C比)が増大した均一ながん細胞が出現します。
  • 子宮頸部がん (扁平上皮癌)(子宮頸部綿棒擦過)
    基底膜(上皮と間質の間にある膜)を破り間質に浸潤したがんです(進行癌)。
    細胞の特徴は、大小多形的ながん細胞で、細胞質が赤や青に濃く染色されます。また、核クロマチンも濃く染まります。
    子宮頸がんの多くは扁平上皮癌ですが、10%程度の割合で腺癌も発生します。近年、子宮頸部腺癌の増加が問題となっています。
  • 肺がん(扁平上皮癌)(喀痰)
    壊死性背景の中に、細胞質が赤や青に濃く染色されたがん細胞が出現し、核クロマチンの濃染も見られます。
  • 肺がん(腺癌)(喀痰)
    肺の腺癌は、肺の奥の方に出来やすく、喀痰の中にがん細胞が出現しないこともあり、画像検査や気管支鏡検査が有用です。
    細胞の特徴は、N/C比の増大したがん細胞からなる集塊で、集塊辺縁はスムースで、核は偏在し、核形の不整や大小不同、核小体の腫大がみられます。
  • 肺がん(小細胞癌)(喀痰)
    小細胞癌は発見された時には転移している可能性が高く、放射線治療や抗癌剤治療が有効です。
    細胞の特徴は、小型で裸核様のがん細胞で、微細なクロマチンと粗なクロマチンが混在してみられます。
  • 悪性中皮腫(胸水)
    悪性中皮腫はアスベストの被爆が原因で起こる、体の内側を覆う膜(胸膜、腹膜、心膜)のがんです。
    細胞の特徴は、中皮細胞に類似した大型のがん細胞の出現で、細胞質辺縁に長い微絨毛を認めます。また、ヒアルロン酸を産生します。
  • 胃がん(印環細胞癌)(腹水)
    細胞質の粘液により核が圧迫されて偏在し、印環状になったがん細胞の出現が特徴です。粘液染色で細胞質の粘液が染色されます。
  • 乳がん(非浸潤性乳管癌)(乳腺腫瘤の穿刺)
    非浸潤性乳管癌は乳管内にあるいは小葉内に限局し、間質への浸潤が見られない初期のがんです。乳がん検診を行うことで、早期のがんが発見でき根治手術や縮小手術が可能となります。
    乳腺の細胞診では、良性か悪性かの判定はできますが、浸潤性か非浸潤性かの判定は難しい。
  • 乳がん(非浸潤性乳管癌)(乳腺腫瘤の穿刺)
    写真は乳頭状集塊を形成し、がん細胞は異型に乏しいが筋上皮細胞の混在はなく、核の重積や極性の乱れを認め悪性と判定しました。
    細胞診検査は100%がんを正しく判定することは困難で、病変部位から正しく細胞が採取されず標本中にがん細胞を認めない時や、がん細胞が異型に乏しく悪性と判定できないこともあり、臨床的にがんが疑われる時や、細胞診検査でおかしな細胞が出現している時は乳腺の生検を行い、組織学的に診断します。

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