■概念と臨床的意義
メタボリックシンドロームは、内蔵肥満、インスリン抵抗性・高血糖、脂質代謝異常 (高トリグリセライド血症、低HDLコレステロール血症)、血圧高値という動脈硬化性疾患と糖尿病のリスク因子が集積した病態を指します。メタボリックシンドロームの重要な意義は、内蔵肥満を原因として、これらの生活習慣病が重積することで、心血管イベントや糖尿病の発症リスクが高くなることにあります。さらに、非アルコール性脂肪肝、高尿酸血症、慢性腎臓病、閉塞性睡眠時無呼吸症候群などとの関連も指摘されています。
生活習慣のバランスの乱れ (過食や偏食、身体活動の低下、喫煙、ストレスなど)が発症要因として関与しています。
■診断基準
1. 腹部肥満 | ウエスト周囲径 男性85cm以上 女性90cm以上 |
2. 中性脂肪値・ | 中性脂肪値 150mg/dl以上 |
3. 血圧 | 収縮期血圧(最高血圧) 130 mmHg以上 |
4. 血糖値 | 空腹時血糖値 110mg/dl以上 |
本邦における一般住民のメタボリックシンドローム有病率は、男性9.0~22.8%、女性1.7~8.7%であると報告され、加齢と共に増加する傾向にあります。表には岡山市国保特定検診によるメタボリックシンドロームの頻度を参考までに示します。
■予防について
1) 食生活習慣の改善
a) 食事バランスを考える
主食(ごはん・パン・麺類を1品)、主菜(肉・魚・卵や大豆製品から1品)、副菜(野菜2品)とし、主食や主菜の重複は避け、塩分の摂り過ぎに注意する。外食では丼物より野菜のある定食にする。
b) 食べ方の工夫を考える
野菜からまず食べ、お腹一杯まで食べないこと。よく噛んで食べる(早食いを抑える、1口30回を目標、脳が満腹感を覚える)。夕食後の間食や夜遅くの夕食は避ける。
c) アルコールは適量であれば問題はないが、なるべく週2日は休肝日を設ける。
2) 身体活動を増やす
a) 週2日以上の30分程度の運動(少し早歩き・腹筋を意識する・大きく腕を振る)
b) 生活のなかで身体活動を増やす(10分でも長く歩く、なるべく階段を使う、キビキビと掃除・洗濯をする、テレビを見ながらストレッチ体操など)
3) ストレスや精神疲労を溜め込まない
普段から規則正しい生活で適正な体重に保つ、現在の健康状態を把握するために健診(メタボ健診:特定健診)をうけることが重要です。