1990年以前には、遠隔転移を有する肺がん患者に化学療法が真に延命効果があるのかどうか疑問でしたが、1995年に初めてその有効性が報告されました。また、その頃からCTにより小型肺がんが発見されるようになり生存率が上昇してきました。さらに、2000年前後から局所進行肺がんに対しては放射線化学療法が有効であることが証明されました。2002年には分子標的療法の先駆けとなったゲフィチニブが一般診療として使用され、高い腫瘍縮小効果と生存期間の延長を示しています。このように、肺がんになっても適切な治療を前向きに受けることにより、長生きができるようになってきました。
一方、がんになっても怖いのは死よりも苦痛であると言われています。日本人が死を前提に考えた時に大切なことは、苦痛がないこと、望む場所で過ごすこと、希望や楽しみがあること、医師や看護師を信頼できること、負担にならないこと、家族や友人と良い関係でいること、自立していること、落ち着いた環境で過ごすこと、人として大切にされること、人生を全うしたと感じることであると言われています。
当院では、2011年に私たちの総合内科学4教室が設立されて以来、緩和ケアチームを発足させ、医師(内科、外科、心療科、麻酔・集中治療科)、看護師、薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカーを中心に緩和医療を手掛けてきました。緩和は決して終末期だけのものではありません。私たちは、患者さんががんと診断された時から抱えるさまざまな苦痛に対して、チームとしてその対策を練ることを使命としています。
