上下肢の痙縮に対するボツリヌス療法

上下肢の痙縮に対するボツリヌス療法

脳卒中や脳外傷、頸髄損傷などの中枢神経の障害後の後遺症の一つとして、痙縮があります。麻痺は動きが悪くなることですが、痙縮は手足を伸ばしたり曲げたりする筋肉の緊張が高まって突っ張ってしまった状態になることです。そのため、痛みが出たり、歩きにくくなったり、股が開きにくくなったり、指が曲がって手のひらが洗えなくなったりします。そのため日常生活動作の制限や介護の困難さの原因になります。

 この痙縮に対するボツリヌス療法は、ボツリヌス菌により産生されるボツリヌス毒素を筋肉に注射することで、全身性の毒性はなく部分的に筋弛緩作用を得る方法です。1973年サルの眼筋への投与の報告がなされたのち、有効性が検討されました。本邦では1996年ボトックス注®が眼瞼痙攣に対して初めて承認され、その後201010月に上肢痙縮・下肢痙縮に対する適応が追加されました。202012月に新たなボツリヌス毒素製剤であるゼオマイン注®が承認されました。これは菌由来の複合タンパク質を取り除くことで、中和抗体が出来にくくなることが期待されています。

 このボツリヌス毒素製剤を痙縮している筋肉へ直接注射することで筋肉の緊張を緩め、歩きやすくなったり、介護をしやすくしたりする効果が得られます。注射後23日から効果が得られ、約3ヶ月で効果は薄れてきます。薬剤自体が高額ですので、身体障害者手帳での医療費減免制度を利用されて治療を受けられる方が多いです。痙縮でお困りの方は、当科へご連絡ください。

執筆者

リハビリテーション科 医長  杉山 岳史
専門医・指導医 日本リハビリテーション医学会専門医・指導医
専門領域・得意分野 脳卒中/嚥下障害

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