【講演内容公開】第1回市民公開講座のご報告

第1回市民講座 メインテーマ:「高度ながん治療の最前線」

講演1 肺がん免疫療法最前線 -最大効果を安全に-
     
川崎医科大学総合医療センター 院長補佐・内科部長
川崎医科大学 総合内科学4教授  瀧川 奈義夫
 
進行非小細胞肺がん治療が大きく変貌を遂げています。
私たちは肺がんに対し、手術・放射線・殺細胞性抗がん薬・分子標的薬に加え、免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)を使った免疫療法を駆使して肺がんに戦いを挑むことになりました(図)。

まずは、手術不能あるいは根治的放射線照射不能の進行肺がんに対し、抗PD-1抗体を組み込んだ薬物療法のめざましい効果が臨床試験のなかで明らかにされてきました。1890年代から行われてきた多くの免疫療法のなかで、抗PD-1抗体は初めてエビデンスを確立した治療といえます。しかしながら、効果が得られるのは非小細胞肺がん全体の約20%に過ぎず、ブレイクスルーとなった薬剤ではありますが、その治療効果を予測する優れたバイオマーカーの発見は必須です。

また、抗PD-1抗体特有の有害事象は、これまでの殺細胞性抗がん薬や分子標的薬と異なり、予想もつかない全身性免疫反応を生じることが明らかとなってきました。肺障害に代表されるような呼吸器疾患だけではなく、消化器、糖尿病・代謝、膠原病、腎、神経、循環器、血液疾患などあらゆる有害事象を念頭に置きながらモニタリングし、内科の総合的な力が必要となっています。

(図)
   
                             瀧川教授(左)の講演様子
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講演2 がん放射線治療の最前線 -選択肢を広げる放射線治療-

川崎医科大学総合医療センター 放射線科副部長
川崎医科大学 放射線医学(治療)准教授  林 貴史
 
 
放射線治療には100年以上の歴史があり、がん治療について多くの知識、経験が蓄積されています。更に最近のめざましい技術進歩もあり、従来よりも安全で効果的な放射線治療を行うことができるようになりました。
がん治療のさまざまな場面で選択できる最新の放射線治療について紹介します。

放射線治療の特長は、がんができた臓器の働きや形を保ちながらがんを治療できることです。例えば、乳がんはかつて、乳房全体を切り取る手術が主流でしたが、今は腫瘍とその周辺をわずかに切除し、乳房全体に放射線をかける乳房温存療法が主流となっています。
また、近年、強度変調放射線治療(IMRT)、定位放射線治療などの高精度治療が可能になり、従来では実現不可能だった副作用を軽減しながら効果を高めることができるようになりました。前立腺がんではIMRTにより、放射線治療と手術の治療成績に差はなく、患者さんが何を優先するかが治療を選ぶうえで重要となっています。
早期肺がんの治療では定位放射線治療は手術に匹敵する治療効果が得られ、身体への負担が少ないことから、高齢者や持病を持つ方も選択できます。

治療法の選択には治るかどうかに加え、治療中、治療後の生活の質や費用面を考慮することも重要です。病気の不安に加え、経済的な心配が重なるのはつらいですが、通常の放射線治療は公的な医療保険や高額療養費制度が使え、実際に支払う額は費用の一部です。また、放射線治療は日常生活を続けながら外来で治療を受けることも可能です。
このように最新の放射線治療はがん治療のさまざまな場面でお役に立つことができます。放射線治療を迷っている方は、まずはご相談ください。
 
当院は、2017年2月より放射線治療を開始します。われわれは安全で質の高い放射線治療を提供し、
地域のみなさまに信頼される施設を目指してまいります。


         
最新の治療装置「TrueBeam」                林准教授
当院の放射線科に詳細を記載しております





講演3 総合医療センターにおけるがん治療

川崎医科大学総合医療センター 院長代理・外科部長
川崎医科大学 総合外科学教授  猶本 良夫
 
 
当院は、地域に密着した急性期医療と高度医療、そして大学附属病院としての教育・研究機能を整備しています。「がん診療」におきましては、医師をはじめとする医療専門職の高い技術力が必要であることは言うまでもありません。さらにその技術に加えて、最新の設備を導入して、早期発見、ロボット手術を含めた内視鏡治療、最新の放射線治療などの低侵襲治療、著しい進歩を遂げる免疫チェックポイント阻害剤をはじめとする薬物治療、そして緩和ケアなどの領域を整備し診断・治療にあたっています。

早期発見においては、PET-CTをはじめとする最新鋭の画像診断機器、消化器をはじめとする各診療領域における最新の内視鏡機器も整備しています。低侵襲治療としての外科領域における内視鏡外科手術も、ダヴィンチによる手術を含め大きなウェイトを占めています。最新の放射線治療装置、内視鏡を駆使した内科的治療技術、高い技術に支えられた画像下治療なども当院におけるがん治療の柱です。

      
                                猶本院長代理

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