【講演内容公開】第4回 開院記念市民公開講座のご報告

第4回 開院記念市民公開講座 メインテーマ:「内視鏡センターの取り組み」

講演1 内視鏡センターの取り組みと最近の胆膵内視鏡のトピックス
     
[講師]川崎医科大学総合医療センター 内科部長
    川崎医科大学 総合内科学2教授 河本 博文


消化器内視鏡治療は一般の人が受ける中で最も身近な低侵襲治療です。出血や急性胆管炎といった緊急疾患の治療や、ポリープやがんの切除といったものがすぐに思い浮かぶでしょう。実は、内視鏡とそれを使いこなせる医師がいれば、普通の病院で大部分の内視鏡検査治療はできてしまいます。したがって川崎医科大学附属川崎病院の時代と比べて、新しい病院で新たにできる検査治療が増えたというわけではありません。古い病院でも最新の検査治療を行っていたわけです。きれいで広くなったおかげで、古い病院では嫌だったけれど、新しくなったので内視鏡検査を当院で受けてみようという患者さんが増えています。では、当院の内視鏡センターの機能を紹介しましょう。

まず、広さは650㎡あり、内視鏡室は6室、緊急内視鏡治療室1室、透視室2室と、フル稼働すれば年間
1万件程度をこなせる能力があります。岡山市内では1、2を争う規模になっています。
 
また、所有している内視鏡の種類は豊富で、上下部内視鏡はもちろんのこと、小腸内視鏡を2本、超音波内視鏡を2本、ディスポ―ザブル胆道鏡1セット、カプセル内視鏡と、附属病院以上の種類を誇っています。したがって、わが国での保険診療上に行える内視鏡検査治療でできないものはありません。




 
河本教授の講演様子
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講演2 胃の病気、腸の病気 -体にも、心にもやさしい検査とは?-

 [講師]川崎医科大学総合医療センター 内科特任部長
          川崎医科大学 総合内科学2特任教授  春間 賢
 
胃が痛い、胃がもたれる、胸やけがする、のどが詰まる、ものを飲み込みにくい、お腹が痛い、お腹がはる、便秘をする、下痢をする等、消化器の病気に由来すると考えられる症状は実に沢山あり、日々の生活の中でしばしば経験します。これらの症状を感じたとき(医学的には自覚といいます)、何か病気になったのではと、不安になった方も多いと思います。特に、中年以降の方は、胃がんや大腸がんなどの悪性の病気を心配されるのではないでしょうか。
 
消化器の臓器のうち、喉頭、咽頭、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門はひとつのつながった臓器で、消化管(しょうかかん)と呼びます。消化管は10メートル近い、長い臓器で、部位によって働きが違うので、逆流性食道炎、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、感染性腸炎、便秘症、過敏性腸症候群、大腸憩室症、食道がん、胃がん、大腸がん、小腸がんなど実に沢山の病気ができます。最近では、好酸球性食道炎、食道けいれん症、機能性ディスペプシア、薬剤による腸炎など、新しい病気も増えてきており、私たちも日々、勉強しなければなりません。
 
消化管の病気を診断するには、超音波検査、内視鏡検査、エックス線検査、CT検査など、いわゆる画像検査が必要です。特に胃や腸の病気については、直接、中を覗く事のできる内視鏡検査は重要です。

内視鏡検査というと、受けられた経験のある方々はしんどい検査だとお思いかもしれません。最近、胃カメラ検査については、内視鏡の太さが6ミリ以下の細い内視鏡が開発され、これまでの通常の内視鏡と遜色ない観察ができるようになりました。大腸については、CTを応用したCTコロノグラフィーが開発され、検査のしんどさも軽減しています。
また、ご高齢の方ですと、内視鏡検査よりお腹の超音波検査を勧めることもあります。胃が痛くて困ったのに、ものがつかえて困ったのに、病院で検査を受けたら「異常ありません」、「心配ありません」と言われ、なんとなく納得のいかない方もおられるのではないでしょうか。このような、病気がないのに消化器症状がある方を“機能性消化管障害”と呼び、診断には詳しい問診と、時には機能の検査が必要になります。病気も検査も沢山あります。
内視鏡センターでは、機械的に内視鏡検査を行うのではなく、患者さんや、時にご家族の方も一緒に病気を考え、どのように検査をするのがベストなのか相談しながら医療を進めています。病気や考え方は個人により違っています。時には、検査をしないこともあります。




 春間特任教授の講演様子


講演3 内視鏡による体にやさしい消化管のがん治療

[講師] 川崎医科大学総合医療センター 内科医長
          川崎医科大学 総合内科学2講師  末廣 満彦

医療の進歩の一方で高齢社会となり、がんにかかる人が増えており、現在では二人に一人ががんにかかると言われています。また、その半数は消化器がんでもあり、検診の普及や診断技術の向上により早期がんで発見される機会も増えています。

早期消化器がんの治療はここ十数年で大きく変わりました。早期胃がんにおいては、一部の症例に限定してスネアを用いた内視鏡粘膜切除(EMR)が行われていました。しかし、切除できるサイズや正確性に限界があり、治療後に再発する症例も見られることから、多くの場合に外科的切除が行われていました。その後、新たな治療法として内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が登場し、2006年に胃がんに対して保険医療の適応を受け、より高い根治性のある治療を行うことができるようになりました。この治療では、内視鏡からさまざまな電気メスを出して病変を剥ぎ取ることができます。この治療法の登場で、取り残しによる再発が極めて少なくなりました。また、大きな表在性の病変でも切除可能となり、従来では手術が不可欠であった 場合でも胃を残して、以前と同様の食生活を維持することが可能となり、患者さんの負担も少なくなりました。

その後、ESDは食道がん、大腸がんに対しても治療を行うことが認められ、日本で始まったこの治療は全世界に広がりつつあります。またESDを応用した新たな治療として腹腔鏡と内視鏡を合わせた合同手術も登場してきており、主に胃の粘膜下腫瘍に対する低侵襲治療として行われています。

また、内視鏡治療は切除不能となった高度進行がんの緩和治療にも応用され、がんによる消化管の狭窄・閉塞によっておこる食物、便の通過障害に対して狭窄を広げる消化管ステント術として応用されており、苦痛の軽減を得ることができます。
 
当院では、これらの治療を積極的に行っており、根治性の高い治療を目指すと同時に、患者さんにより負担の少ない治療についても提供させていただくようにしています。お困りのことがありましたら、お気軽にご相談ください。


 
末廣講師の講演様子

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