【講演内容公開】第6回 開院記念市民公開講座のご報告

第6回 開院記念市民公開講座 メインテーマ:「おしっこのお話  -日常診療から最新医療まで-」

講演1 「おしっこ」を科学する-検尿から分かるあれこれ-
     
[講師]川崎医科大学総合医療センター 泌尿器科医長
     川崎医科大学 泌尿器科学講師  堀川 雄平
 
 
泌尿器科(ひにょうきか)の検査についてお話しします。
 
私たちが、毎日目にする“おしっこ”(尿)ですが、おそらく多くの方の予想に反して、非常にきれいな液体なのです。体の異常があると、尿に異常が出ることがあるため、学校や職場の健康診断でいつも検査されています。また、女性の方の2人に1人は経験すると言われている、膀胱炎(ぼうこうえん)を疑うときにも尿を検査します。具体的には、“検尿(けんにょう)”と言いますが、全く体に負担をかけずに体の情報を得られる、大切な検査であり、泌尿器科で最初に行う検査なのです。

一方、尿が最近出にくくなった、とか、尿の我慢ができないことがある、などの症状があれば、膀胱(尿をためるところ)や尿道(尿を体外に出すための通路)の異常を調べる必要があります。検尿に加え、尿が膀胱から十分出せているかどうかを調べるため、エコー(超音波検査、全く痛みがありません)を行います。もっと詳しく調べるときには、トイレのセンサー付き便器に実際に尿を出してもらい、十分な勢いがあるのかどうかも見ることができます(ウロフロ検査)。
もちろん、検尿もエコーも、腫瘍(がん)を見つけるための最初の検査でもあります。特に、痛くもないのにおしっこがトマトジュースみたいな色の時には、膀胱の中を直接カメラで見ると、膀胱がんが見つかることもあります(膀胱鏡、5分程度で終わります)。

近頃、前立腺がん(前立腺:精液を作るところ)が、男性のがんで1、2位を争うようになりましたが、その検査も泌尿器科で行います。採血の項目でPSA(ピー・エス・エー:腫瘍マーカー)を測り、チェックすることができます。




堀川講師の講演様子
当院の泌尿器科はこちら




講演2 「おしっこ」の病気-どうやって治すの?-

 [講師]川崎医科大学総合医療センター 泌尿器科副部長
    川崎医科大学 泌尿器科学准教授  上原 慎也
 
 
泌尿器科では、ホルモンを産生する副腎、尿を生産する腎臓、尿を輸送する尿管・膀胱・尿道、そして生殖に関連する精巣や前立腺を扱い、疾患として、悪性腫瘍、感染症、尿路結石、排尿障害、不妊症などを主として診療しています。

尿路感染症は、最も一般的な泌尿器科疾患の一つです。治療の基本は抗菌薬の投与ですが、近年では、抗菌薬の乱用や、海外旅行の一般化、家畜・養殖魚への投与による間接的摂取などにより、世界的な規模で、抗菌薬の効きにくい細菌が増加しています。これは、人間の存続に対する脅威であり、抗菌薬の使用制限や適正使用の努力を行う必要があります。

尿路結石は、若年から高齢者まで幅広く発症する疾患ですが、女性に関しては、女性ホルモンが低下する閉経後に多く見られるようになります。激痛を主な症状としますが、腎盂炎を併発すると、命に係わる事態になります。多くの場合は、自然に排出されますが、排出されない場合は、体外衝撃波や、専用の内視鏡とレーザーで結石を破砕する必要があります。最近では、機器の発達により、治療成績は格段に向上しました。

泌尿器科での悪性腫瘍の治療では、大きく開腹する手術は稀で、多くの場合、内視鏡手術が行われます。膀胱がんでは、尿道から内視鏡を入れて切除する手術、腎がんや尿管がんでは、おなかに入れた筒から器械を出し入れして切除する腹腔鏡手術、前立腺がんでは、コンピュータ制御された精密な器械を用いたロボット手術が主に行われています。

泌尿器科は、昔から、体に優しい治療を心がけてきた科です。現在では、ロボット手術を先頭に、最先端の技術をどんどん取り入れています。当院泌尿器科でも、ロボット手術、体外衝撃波、結石に対するレーザー治療などを積極的に取り入れ、良質な医療の提供に努めています。

 
上原准教授の講演様子



講演3 蛋白尿から腎臓をまもる

[講師] 川崎医科大学総合医療センター 内科副部長
         川崎医科大学 総合内科学1准教授  大城 義之



皆さんは、小学校時代や中学校時代、そして社会人になってからも健診の時には必ず尿検査を行っていたかと思いますが、尿検査は何のためにするのでしょうか? 
ご存じの方も多いと思いますが、尿検査は蛋白尿や血尿がどの程度出ているかを見ています。蛋白尿が多いと早く腎臓の働きが悪くなるので、早期発見と早期治療を行うために、健診では尿検査が取り入れられています。

腎臓は少しぐらい悪くなってもほとんど症状が出ず、そのため以前は、腎機能低下が顕著となり慌てて透析を行うという医療が行われていました。自覚症状がなかったため、腎機能が悪いことに気が付かなかったのです。現在は尿検査の普及に伴い腎臓病の早期発見・早期治療が行われるようになり、透析医療への導入を遅らせたり、腎機能の悪化が防げたり、疾患によっては完治したりするようにもなりました。

腎臓にある糸球体基底膜という薄い膜は、通常蛋白や血液は通過することが出来ませんが、基底膜の障害により蛋白尿や血尿が出て、やがて基底膜の構造が破壊され腎不全にいたります。逆にいうと蛋白尿や血尿を減らすことが、腎臓病の進行阻止につながります。腎臓のどの病気にも共通して言えることは、蛋白質の負荷を減らし、糸球体にかかる圧を減らす事が重要ということです。

以前は、腎臓から蛋白が出ていると血液中の蛋白質が低下するため高蛋白食で蛋白を補っていましたが、この食事療法は蛋白尿をむしろ増やし腎機能を悪化させることがわかり、現在は低蛋白食をすすめています。また蛋白尿が多いことは腎機能の悪化を促進させるだけではなく、心血管病の発症とも深く関係しています。すなわち蛋白尿から腎臓をまもることはご自身のライフスタイルを維持することに他なりません。
 
                       



大城准教授の講演様子
当院の内科はこちら

メディカル
インフォメーション 検索

診療科・部門で探す