【講演内容公開】第5回 開院記念市民公開講座のご報告

第5回 開院記念市民公開講座 メインテーマ:「女性のがん -検診から最新の治療まで-」

講演1 女性に増えている大腸がん~その予防から早期診断と治療まで~
     
[講師]川崎医科大学総合医療センター 総合健診センター部長
        川崎医科大学 健康管理学教授  鎌田 智有 
 
2012年の統計によると、1年間に大腸がんにかかる方は、男性約77,000人、女性約57,000人です。臓器別に見ると男性は肺がんについで、女性は乳がんについで共に2位であり、腸がんにかかる割合は40歳代頃から増加し始め、高齢になるほど高くなります。

近年、女性におけるがん死亡の1位が大腸がんとなっています。女性も社会進出により飲酒の機会が増えています。また、女性ホルモンが大腸がんの抑制因子の1つであると示唆されており、女性ホルモンが低下する更年期以降の女性は要注意です。
●大腸がん検診(早期発見のためには)
早期の段階で大腸がんを診断するには、がん検診を受けることが重要です。
1)便潜血検査
スクリーニング検査として用いられ、2日間の検便を調べます。がんやポリープなどがあると、大腸内に出血することがあるため、その血液を検出する検査です。
2)大腸内視鏡検査
内視鏡で直接観察する方法で、がんやポリープに対する診断能が高いことが特徴です。主には便潜血陽性者に対する精密検査のために用いられる検査法です。大腸内視鏡検査は病変を確認し、組織検査が行える利点があります。
3)新たな大腸がん検診としての大腸CT検査
総合健診センターでは、大腸がん検診として大腸CT検査を導入しました(保険診療対象外)。
大腸CT検査とは、内視鏡を使わない新しい大腸検査方法です。大腸を炭酸ガスによって拡張させ、CTを用いて撮影することで、あたかも内視鏡検査を受けたかのような大腸3次元画像を得ることができます。内視鏡検査より苦痛が比較的少なく、飲用する下剤量も少なく、約15分で検査することが可能です。



●大腸がんの治療

早期の大腸がんは内視鏡治療で切除が可能です。内視鏡治療は、特に体への負担が比較的軽く、入院期間が短くてすむなどの利点があります。

大腸がんの予防
大腸がんのリスクを下げる要因としては、運動による予防効果が確実とされています。特にデスクワークなどで運動不足になりがちな人は、日常の中で体を動かす習慣 (身体活動)をつけましょう。また、食物繊維を多く含む食品は予防要因と位置づけられています。

身体活動を増やすコツ

a)週2日以上の30分程度の運動(少し早歩き・腹筋を意識する・大きく腕を振る)
b)生活のなかで身体活動を増やす(10分でも長く歩く、なるべく階段を使う、キビキビと掃除・洗濯をする、テレビを見ながらストレッチ体操など) 

 


鎌田教授の講演様
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講演2 乳がん検診(高濃度乳房)について

 [講師]川崎医科大学総合医療センター 外科副部長
    川崎医科大学 総合外科学准教授  中島 一毅
 
 
3月8日の朝日新聞に、「日本人に多い『高濃度乳房』がん検診・マンモに限界」との見出し記事が掲載されました。これはアジア人の若年者(30歳代後半~40歳代)女性はマンモグラフィで高濃度乳房(著しく高濃度+不均一高濃度)と判定される方が多く、高濃度乳房ではマンモグラフィの乳がん検出能力が2割程低下するため、対策型検診(市町村で実施される検診)で高濃度と判定された人は、他の検査装置を使用した検診(超音波検査が推奨されている)を受けるべきであり、検診時には高濃度かどうかを通知してほしいとの内容でした。

乳がんの視触診検診は統計学的に生命予後改善に有効性がないので、必ずしも必須ではない旨が、「がん検診のあり方に関する検討会2016」にて正式に報告されたため、2016年度から全国のほとんどの地域での視触診が廃止、マンモグラフィ検診単独となっていた状況であったため、本記事の世間に与えるインパクトは大きく、検診施設への問い合わせが急増しました。
 
そこで、乳がん検診関連3学会では「高濃度乳房問題に対するワーキンググループ」を急遽組織し、現時点での国内の検診現状・インフラ状況などを詳細に評価し、3月23日「対策型乳がん検診における『高濃度乳房』問題の対応に関する提言」として報告しています。本報告では、「高濃度乳房の一律通知は時期尚早」と言う結論でありました。高濃度乳房であることを知り、必要な検査を追加することは重要ですが、報告方法、説明手順、施設などが充実していない状況では、受診者の精神的不安をあおる可能性が高く、現時点での一律通知は控えるべきとの判断だと思われますが、乳がんを心配する市民には受け入れがたく、十分な説明、現時点でできる対策が提示されていないことなどが問題です。
 
             
中島准教授の講演様子
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講演3 最新の婦人科検診と治療
 
[講師] 川崎医科大学総合医療センター 産婦人科部長
    川崎医科大学 産婦人科学2教授  本郷 淳司

子宮頸がんの早期発見のため、子宮頸部の擦過細胞診による検診が自治体や企業、また医療施設で広く行われています。初期の子宮頸がんは全く無症状で、症状受診では進行して治療が困難なことも多くなっています。無症状者に対するマススクリーニングの細胞診検査は有効ですが、わが国の
受診率は40%弱と非常に低いことが最大の問題です。また細胞診の正診率は60-85%程度と決して高くはなく、継続して受診することも肝要です。
近年、より高感度のHPV検査を併用した検診の有用性が明らかとなり、早期の普及が望まれています。
わが国の子宮がんの90%は子宮頸がんでしたが、食生活やライフスタイルの変化により、現在では子宮体がんが50%以上を占めるようになりました。ハイリスク者や不正出血があった方に対して子宮体がん検診を行う必要が高くなっています。

当院ではこれらの新規手法をいち早く取り入れ、また若年者に急増している子宮頸部腺がん発見の精度をより高めるため、ナローバンドイメージを用いた新規のコルポスコープを導入した、最新の精度が高い婦人科検診の提供を予定しています。

また当院で可能である、初期進行子宮頸がんに対する広汎性子宮頸部切除術や円錐切除術、初期子宮体がんに対するホルモン治療等の妊孕性温存手術やダヴィンチを用いた低侵襲ロボット手術なども紹介しました。
 
 


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