隠れ心不全に気を付けよう

更新日:2023/07/03

隠れ心不全に気を付けよう

   心不全といえば、心臓移植や酸素に繋がれてしんどい病気、など他人事の様に思う方が多いと思います。作業や運動をしているときに、必要な血液が十分に体に回らなくなることを心不全といいます。このように定義すると、患者さんの数はとてもおおく、現在、200万人いると言われています。これはあくまで症状が出ている患者さんの数で、予備軍を含めると隠れ心不全はさらに多くいると考えられます。誰でもなりうる病気、いわゆるコモンディジーズと言われています。例えば、40歳代の人が今元気であっても、10人に1人は将来心不全になるといわれています。
 階段を上ると息が切れる、だるい、しんどい、足が腫れてきた、などの症状が現れると、心不全を疑います。高齢者がそのような症状を訴えれば“歳のせい。”と言われてしまいかねません。しかし、高齢者の心不全は急速に増えてきているので要注意です。その理由として、心臓の収縮は問題なくても、心臓が広がる力(拡張力)が衰え、十分に心臓に血が入らなくなる拡張不全による心不全が高齢者で増えるからです。そうなると、塩分と水が体の中に溜まり、結果として息切れが出現し、浮腫みが生じます。  多くの場合、患者さんは心臓が悪いとは思っていないので、よほど症状が悪化しない限り医療機関を訪れることはありません。しかし、一度心不全が発症すると、繰り返し発症し、ひどい場合は入退院を繰り返し、命に関わることもあります。
 血圧が高い人、糖尿病の人、肥満の人、動脈硬化がある人、腎臓の具合が悪い人が心不全になる危険性が高くなります。それぞれの疾患をしっかり治療すれば心不全の発症や悪化は予防できます。心不全は一度症状が出ても、すぐに適切な治療をすれば進行を食い止めることもできます。しかし、気付かずにどんどん進行してしまうと、命に係わる病気であることを覚えておいてください。よく“薬は一生飲み続けなければいけないのですか?”と聞かれます。それに対して、“薬をきちんと飲み続けることで心不全の発症や進行を予防でき、元気な日常生活を維持できます。”とお答えします。
 足がむくむ、動悸や息切れがする場合は、歳のせいだと思わずに、かかりつけ医に相談することをお勧めします。

執筆者

内科 部長  伊藤 浩
専門医・指導医 日本内科学会認定医/日本循環器学会専門医/日本超音波学会指導医/Fellow of the American College of Cardiology/Fellow of the European Society of Cardiology/Fellow of the Japanese College of Cardiology/Fellow of the American Society of Echocardiography
専門領域・得意分野 心不全/動脈硬化/画像診断/成人先天性心疾患

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