よくわかる脳卒中のお話・・・その15

更新日:2018/01/08

老年期のうつ病

いつから私たちは老いを意識するのでしょうか。定年になって仕事を辞めた時、体力的な衰えを自覚したとき、配偶者や友人を失った時、いやおうなしに老化を認識しなければならない瞬間が私たちに訪れます。孤独や喪失感、さまざまな感情に直面するのかもしれません。

今回は老年期のうつ病についてお話します。国際診断基準によると、うつ病とは、悲しい、むなしい、やる気の喪失、以前は楽しかったことが楽しめない、思考力・集中力・決断力の低下、体重減少、食欲低下、不眠(朝早く目が覚める)、必要以上に自分を強く責めてしまう、疲労感、自殺願望―これらの症状のうち5つ以上が2週間以上続いた場合を指します。

しかし、高齢者のうつ病は青壮年期のうつ病とは症状が異なるので見逃されることもあります。無気力、社会からの退避、思考や身体活動の鈍化が特徴的です。

さらに、近年の画像診断の進歩により、脳血管疾患とうつ病の因果関係が報告されました。うつ病の患者さんの脳をMRIで調べたところ、50歳~64歳までで半数以上、65歳以上では90%以上に潜在的な脳梗塞が見つかりました。

つまり、高齢者で初めてうつ病になった人は、潜在的な脳梗塞が存在する可能性が高いといえます。脳血管性のうつ病は、明らかに青壮年期のうつ病とは異なる診断や治療が必要です。また、放置すれば脳血管性の認知症になる可能性もあります。

高齢でうつ症状が見られる方は、さまざまな検査が可能な総合病院を受診してください。当然、家族や友人の協力も必要です。

年齢を重ねるにつれ、刻々と訪れる社会的変化により、うつ病を招く心理的要因が増加するのも事実です。しかしそれだけが原因でないこともあります。

気になる症状がおありの方は、重い腰を上げて専門医に相談してみましょう。何らかの解決の糸口が見つかるかもしれません。

 
次回は、手足のふるえについて、詳しくご説明します。

執筆者

脳卒中科 副部長  井上 剛
専門医・指導医 日本内科学会認定内科医/日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
専門領域・得意分野 神経疾患全般/脳卒中全般

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