ACPとはなかなか聞きなれない言葉ですが、advance care planning の頭文字をとっています。日本語訳をすると人生会議と訳することが近ごろ増えています。これは、患者さんの意思を十分に反映した意思決定をしてライフプランニングをしていこうというプロセス全体のことを指す言葉です。がんは進行した状態で患者さんが苦しい時期が長く続くイメージがあると思いますが、その時期を患者さんが自分自身の思いを反映して過ごしていただくことが重要だと考えます。苦しい時期であっても患者さんが自己決定が出来るということと、自己決定出来ないことでは違いが大きいのではないかという動きが、医療者だけでなく社会全体で出てきています。
この会議は、基本的に会議自体は1回だけではないというのがポイントです。患者さんが厳しい状態に直面した際にどのようにしたいかを、素直に、医療者と話し合いを始め、何度かにわけ時間をかけて自分の本来の方向性を探ります。会議の中で出てきたアイディアを共有するだけでも患者さんは安定した状態になれるので、時間をかけて週に1・2回から相談させていただき、家族の方、周りのサポーターの方も一緒に時間をかけて話し合います。そうすると今まで見えなかった患者さんの意思がはっきりしてくるということは、非常によく起こるので、是非そういった方法があるということを知っていただきたいと思います。
これまでの経験で、患者さんは自分自身の残りの人生について過小評価されていることが思いのほか多いと気づかされました。がんの進行期になると自分はもう何もできないと思われる事がよくありますが、実際のプロセスの中で家で出来ることと病院で必要なことが整理されてくると、家と緩和ケア病棟を往復しながら自分のライフスタイルに合わせた生活を送られる方もいます。病気になると悲観的になることは間違いないと思いますが、その中でも自分のやりたいことそして自分の主たる希望がはっきりすることで確かに前向きになれると考えます。
患者さんが希望されないケースもありますが、人生会議をすることが基本的に主流になりつつありますので、検討されてみてはいかがでしょうか。