アスベスト関連疾患の画像診断

更新日:2021/06/24

アスベスト関連疾患の画像診断

  アスベスト(石綿)は、燃えにくい・加工がしやすいなど非常に使いやすく安価なため高度成長時代に良く使われていました。しかし、アスベストの繊維を吸収すると、長年時間が経過してから健康被害が出ることがわかり、最近でも建設現場のアスベスト被害をめぐる集団訴訟を耳にした方もいらっしゃるかと思います。
 関連疾患としては、胸膜中皮腫や肺がんのリスクが上がると言われています。胸膜中皮腫は胸膜の腫瘍性の悪性疾患であり、治療が難しく一旦かかると治りにくい疾病です。その他に石綿肺などもありますが、非常に濃厚な暴露をしないと発症しないため、現在ではほとんど見られません。
 建設現場で働く方にみられるものに、胸膜プラークというものがあります。これは病気ではありませんが、自覚がなくても所見が画像(CT)で認められるとアスベストを吸っている証拠です。単純写真でもわかりますが、CTの方が検出率が高く、わずかな軽度の胸膜プラークはCTでなければ識別できません。
 胸膜プラークは、喫煙により息がしんどくなり受診すると胸膜プラークが見つかったなど、他の病気をきっかけに見つかることがよくあります。たいていの場合、そういえば近くに工場がある、建設現場で働いている家族の服を洗っていた、など画像からその人の歴史がわかります。
 ハイリスクの人は2割ほど生存率が上がる結果もでており、短い時間で線量(被ばく量)を落としてかなり綺麗な画像が得られるため、職歴があれば国から健康診断の手帳がもらえたり、低線量のCT健診が行われているので、受診するきっかけになればと思います。

執筆者

放射線科 部長  加藤 勝也
専門医・指導医 日本医学放射線学会放射線診断専門医/マンモグラフィ検診精度管理中央委員会認定読影医
専門領域・得意分野 胸部領域の画像診断

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