子どものインフルエンザと注意事項

更新日:2017/02/23

子どものインフルエンザと注意事項

1.注意すべき症状
 
子どものインフルエンザでも、高齢者と同じように肺炎などの呼吸器合併症に注意が必要です。
2009年にパンデミックを起こしたAH1pdm09ウイルスは、呼吸器合併症が大きな問題となりました。
そして、特に子どもに特徴的なもうひとつの合併症として、中枢神経合併症があります。
インフルエンザウイルスは、子どもの中枢神経すなわち脳に悪影響をおよぼす病原体です。


(1)熱性けいれん
インフルエンザで子どもが入院する場合、その原因の6~20%程度が熱性けいれんという報告1)があります。熱性けいれんは、通常生後6か月から5歳くらいまでの年齢に好発しますが、インフルエンザでは、年長児や学童でも時に熱性けいれんを合併します。

(2)異常行動・言動
「歩きまわる」「飛び出す」「飛び降りる」「つじつまの合わないことを話す」などの異常行動・異常言動は、抗インフルエンザ薬投与にともなう副作用ではとの懸念がわが国で広がり、社会を巻き込んで議論されました。しかし、厚生労働省研究班によるインフルエンザの随伴症状に関する調査では、抗インフルエンザ薬投与の有無にかかわらずインフルエンザ罹患小児の10.5~12%で異常行動・異常言動が認められました2)。インフルエンザを発症した当日、あるいはその翌日までに出現する場合がほとんどでした。インフルエンザを発症して2日間程度は、子どもを一人にしない、目を離さないなどの注意が必要です。


(3)脳症
短時間で急激に症状が進行する重篤な合併症である「インフルエンザ脳症」の症状として、「意識障害」は最も大切です(図1)3)。ずっと眠っていて目が覚めない、反応が鈍い、過度に興奮してコミュニケーションがとれないなどの症状は、中枢神経系に何らかの異常が生じていることを示す徴候です。子どもの様子が、明らかにいつもと異なると思う場合は、早期に医療機関を受診することをお勧めします。

図1


† 単純型とは・・①持続時間が15分以内 ②繰り返しのないもの ③左右対称のけいれん
ただし、けいれんに異常言動・行動が合併する場合には単純型でも二次または三次医療機関に紹介する。
‡ 複雑型とは・・単純型以外のもの
インフルエンザに伴う複雑型熱性けいれんについては、脳症との鑑別はしばしば困難なことがある。
# postictal sleep(発作後の睡眠)や、ジアゼパム等の抗けいれん剤の影響による覚醒困難などを含む。
明らかな意識障害が見られる場合や悪化する場合は速やかに二次または三次医療機関に搬送する。
§ 医師または看護師により定期的にバイタルサインのチェックを行う。
経過観察・・ここでいう経過観察とは、その時点では脳症のリスクが低いと思われる場合である。
帰宅後に神経症状の再燃あるいは新しい症状が出現した場合は、必ず再診するよう確実に指示する。
特に、二相性の脳症では3~5日後にけいれんや意識障害が出現することがあることを伝える。
現時点では二相性の脳症を早期に診断する方法は知られていない。
補)電話で問い合わせがあった場合、発熱に何らかの神経症状が伴う場合は受診を促すこと。






 
2.解熱薬への注意事項
 子どものインフルエンザ患者では、解熱薬としてはアセトアミノフェンを使います。非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs, NSAIDs)は、ジクロフェナクナトリウムやメフェナム酸がインフルエンザ脳症の予後悪化に関連するという厚生労働科学研究班による調査結果があり使用しません4)。
かつて解熱薬としてしばしば使われたアスピリンについても、Reye症候群という一種の脳症との関連を示唆する海外での報告があります5)。アスピリンは「サリチル酸系薬剤」に分類され、大人がよく使う総合感冒薬にはサリチルアミドなどの「サリチル酸系薬剤」がしばしば配合されています。子どもがインフルエンザにかかった際は、自己判断で手持ちの薬剤を使うのではなく、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。



【参考資料】
1) Poehling KA, Edwards KM, Weinberg GA et al:The under-recognized burden of influenza in young children. N Engl J Med 41:31-41,2006.
2) 横田俊平、藤田利治、森 雅亮 他:インフルエンザに伴う臨床症状の発現状況に関する調査研究(第1報).日本小児科学会雑誌 111:1545-58,2007.
3) 厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)インフルエンザ脳症の発症因子の解明とそれに基づく発症前診断方法の確立に関する研究班(研究代表者:森島恒雄).インフルエンザ脳症ガイドライン 改訂版.平成21年9月.
4) Nagao T, Morishima T, Kimura H, et al:Prognostic factors in influenza-associated encephalopathy. Pediatr Infect Dis J 27:384-389, 2008.
5) Hurwitz ES, et al:Public health service study of Reye’s syndrome and medications, Report of the main study.JAMA 257:1905-1911,1987.

執筆者

小児科 部長  中野 貴司
専門医・指導医 日本小児科学会小児科専門医・指導医/日本感染症学会専門医・指導医/ICD制度協議会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)/国際渡航医学会渡航医学専門医/臨床研修指導医
専門領域・得意分野 小児科、感染症、予防接種、国際保健

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