地球温暖化など環境因子の変化で、スギ花粉症をはじめアレルギー性鼻炎患者さんは増え続けており、すでに人口の3~4割の方が罹患している国民病の一つです。鼻アレルギーの原因となる抗原や症状発現の機序は解明されつつありますが、予防法や治療法については、まだまだ新たな研究と治療の展開が行われています。通年性アレルギー性鼻炎の抗原はハウスダスト、ダニ、カビで、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の抗原は春:スギ・ヒノキ、夏:イネ科(カモガヤ、ハルガヤ)、秋:キク科(ヨモギ、ブタクサ)が代表です。スギ・ヒノキ花粉は、毎年バレンタインデー(2月14日)から5月の大型連休まで飛散します。2019年のスギ・ヒノキ花粉に関する山陽新聞の記事では、岡山県内では2月15日に本格飛散が確認されています。日本気象協会によりますと岡山県の飛散数は例年に比べ1.3~2倍に上ると予測されています。
飛散数の増加予測は、花芽が育つ昨年の6~8月に気温が高く、日照時間が長かったことなどが理由です。
1993年に発刊された鼻アレルギー診療ガイドラインは改訂を重ね、2016年に第8版として発刊されました。ガイドラインによりますと花粉症の治療はまず予防が重要です。花粉は雨が降るとあまり飛散しません。ただし翌日晴れて気温が上昇し、風が強くなると前日に地面に落ちた花粉も舞い上がって多くの飛散が認められます。そんな日は外出を控えましょう。また外出時は、帽子、眼鏡、マスクが必須です。花粉症用の眼鏡、マスクはさらに効果的です。またウール製コートなどは花粉が付着しやすいのでナイロン製などで対応してください。帰宅時は玄関前で衣服に付いた花粉を払い落とすなどして室内に持ち込まないことです。インフルエンザ予防も兼ねうがい、手洗い、洗顔(洗眼)をしてください。同時に窓を閉めて布団や毛布、枕を外干しないことが重要です。日々の掃除もこまめにしてください。花粉症発症予防になる食品としてフラボノイド、ポリフェノールを含む食物、しそ、青汁、甜茶、ハーブ茶、ドクダミ茶などが報告されています。最近、L-92乳酸菌も有効性があると発表されています。
花粉症の薬物治療の基本は眠気など副作用の少ない第2世代抗ヒスタミン薬(1990年以降に開発)と鼻噴霧用ステロイド薬が中心となり、抗ロイコトリエン薬、さらに鼻閉が強い方には第2世代抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合剤(ディレグラ®)などを併用していきます。一昨年から新規第2世代抗ヒスタミン薬として順次、ビラノア®、デザレックス®、ルパフィン®が発売され、いずれも眠気を中心とする安全性が高く、前2者は自動車運転に制限がありません。いずれもかなり即効性があり、効果の持続が長いことが特徴です。最近、貼付剤によるアレルギー性鼻炎の治療薬(アレサガテープ®)も発売されました。小青竜湯などの漢方薬も有効です。市販の花粉症薬には成分として血管収縮薬が入っていることが多く、特に鼻閉に即効性はあるのですが、繁用すると逆に悪化しますので注意が必要です。
アレルギー性鼻炎に対する手術的療法には、通院で可能なレーザー治療があります。当院ではアルゴンプラズマ凝固装置(以下APC)を使用して下鼻甲介粘膜を凝固しています。レーザーは2~3回の施行が必要ですがAPCは1回の治療で1年間効果が持続します。鼻内に麻酔液の染み込んだ綿を挿入し20分後に5分かけて凝固します。また半永久的な強い効果を期待される場合は1週間入院で全身麻酔下に内視鏡的を使用して粘膜下下鼻甲介骨切除術・鼻中隔矯正術・後鼻神経切断術を組み合わせて行います。副鼻腔炎を合併していれば同時に副鼻腔根治術も可能です。
舌下免疫療法は唯一の根本的治療です。ダニに対するミティキュア、スギに対するシダキュアが主流となります。いずれも舌下錠で重篤な副作用はありません。ただし2年間の通院が必要です。当院では2019年4月からまずダニに対する舌下免疫療法を開始します。
花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎でお困りの方は、どうぞ受診してください。