人工膝関節ロボット支援手術について

更新日:2023/03/01

人工膝関節ロボット支援手術について

   泌尿器科疾患、消化器・呼吸器・循環器疾患、婦人科疾患に対する外科手術において、患者さんの身体への負担を軽減する低侵襲手術が求められています。皆さんは、『ダ・ヴィンチ』や『hinotori』といった手術支援ロボットを聞いたことがあるかもしれません。このロボット支援手術は、技術的に難しい症例にも安全で精度の高い治療を可能にすることが報告されています。人工膝関節置換術は膝の変形や疼痛に対する手術方法ですが、その手術にも最近ではロボット支援手術が行われるようになりました。
 日本では年間約9万件の人工膝関節手術が行われ、整形外科領域で最も成功した手術の一つとされていますが、生来の膝関節機能を完全に再現することが困難なことなどから患者さんの術後満足度は必ずしも高くはないようです。人工膝関節手術で良好な成績を得るためには、膝の靭帯バランス調整を含めた手術の正確性、人工関節自体の性能、手術の安静性の向上と低侵襲技術が必要とされます。
 皆さんの乗用車にはナビゲーション機能が付いているでしょうか。また、目的地に向かうときに、Googleマップなどのアプリを使いますか。無くても目的地には着けるけれど、あれば所要時間もわかるし、安心もできて便利ですよね。
 人工関節手術にも従来からナビゲーション支援手術が行われてきました。手術の正確性が増すので、外科医にとっても有効な方法です。しかし現実は、2020年の日本人工関節登録制度によると、人工関節置換術手術の20%のみにしか使用されていません。さらにロボット支援手術となると2%になります。我々は2004年からナビゲーションシステムを使用していましたが、2022年11月からは2台の人工膝関節ロボットを導入しました。
 この2台の人工膝関節ロボットを使用することにより、患者さん個人に応じた人工膝関節を選択することが可能となり、生来の膝関節機能を可能な限り再現できるオーダーメイド医療を提供できると考えています。人工膝関節ロボット支援手術は、完全に医師の操作によって実施されます。当院では人工関節認定医、関節鏡技術認定医が治療にあたりますので、安心安全で精度の高い手術を提供できると考えています。また、医療費は人工膝関節ロボット支援手術でも通常の人工膝関節置換術に要する費用と同じになります。「膝の痛み・変形」でお困りの方は、ぜひご相談ください。

画像:図1:VELYSTMロボット支援ソリューション
     (ジョンソン・エンド・ジョンソン、デピューシンセス)
      2022年度グッドデザイン賞受賞

執筆者

整形外科 部長  阿部 信寛
専門医・指導医 日本整形外科学会専門医・リウマチ医・脊椎脊髄病医・認定スポーツ医・運動器リハビリテーション医/日本リウマチ財団リウマチ登録医/日本体育協会公認スポーツドクター/日本医師会認定健康スポーツ医/関節鏡技術認定医/日本人工関節学会認定医/医学博士/卒後臨床研修指導医/臨床修練指導医
専門領域・得意分野 スポーツ外傷(肩・肘・股・膝・足関節の関節鏡視下低侵襲手術)/関節外科(人工関節)

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