【講演内容公開】第2回 開院記念市民公開講座のご報告

第2回 開院記念市民公開講座 メインテーマ:「脳卒中医療の最前線」

講演1 「岡山市中心部の脳神経センター」としての役割
     
[講師]川崎医科大学 脳神経外科学2 教授
     川崎医科大学総合医療センター 脳神経外科部長 小野 成紀
 
川崎医科大学附属川崎病院は昨年11月30日をもってその長い使命を終えました。その間、私を含め多くの岡山県民がその恩恵を享受してきました。それまで川崎病院では、私ども、岡山大学医学部脳神経外科の同門の先生方を中心とした脳神経外科診療がめまぐるしく展開されており、くも膜下出血、急性硬膜外出血、脳出血、脳梗塞など急性期疾患を中心に診療が行われてきました。当時は少ない人数の医師でやりくりをし、多くの患者さんの生命を救うと同時に、優秀な脳神経外科医をも育ててきました。

教授、部長職を拝命し当院に赴任してから4年以上が過ぎた12月1日、ついに新病院が開院し、私たち脳神経外科医も1名から5名へと増員され、地域の基幹病院、教育病院に恥じない陣容が整ってきたと自負しています。この数年来、我々は、以前の忙しかった頃の川崎病院に追いつくべく、脳神経救急の体制の確立、手術レベルの向上、教育施設としての充実などに努めており、最近やっとその体制が整備されてきたことに感無量の思いです。

さて、当院ではスタッフの充実にともない、脳卒中専門医、脳血管治療専門医、脊椎・脊髄専門医複数名のほか、神経内視鏡、小児神経外科専門医も在籍する岡山県でも数少ない病院の一つとなりました(これらすべての専門医がそろっているのは県内では当院と岡山大学病院のみ)。今後はこれらの特色を生かし、地域に密着した、あらゆる脳神経疾患に精通した広く深い治療を行える施設として、各部門と連携しながら地域医療に貢献したいと考えています。
特に我々は1)脳神経救急、2)脊椎・脊髄疾患(手足の痛みやしびれ)、3)脳動脈瘤塞栓術などの脳血管内治療等に力を入れていきます。




小野教授の講演様子
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講演2 脳梗塞治療の最前線

 [講師]川崎医科大学 脳卒中医学 准教授
   川崎医科大学総合医療センター
 脳卒中科副部長 井上 剛
 
 
①脳梗塞の血栓溶解療法を中心とする超急性期治療
2005年にt-PAという薬を点滴することで脳に詰まった血栓を溶かす治療が日本でも開始されました。
ただし、私たちの体の中で脳は非常にデリケートな部分なので、脳の血管が詰まると、すぐに脳は死んでしまいます。この治療も、脳梗塞が起こって4時間30分以内に開始しなければ効果がありません。また、脳梗塞を起こして大幅に時間が過ぎてから治療を開始すると、薬の副作用で脳出血を起こし、さらに重症化する可能性があります。

次に、2010年より、細い管(カテーテル)を脳の血管に入れて、血栓を除去したり、吸引したりする新しい方法(脳血管内治療)が開発され、これらの治療により数年前では治療できなかった重症の患者さんを救うことができるようになりました。

 


②脳卒中ケアユニット(SCU)
SCU(Stroke Care Unit)とは、急性期の脳卒中の患者さんを受け入れる専用の病床で、脳卒中の専門知識を持つ経験豊富な医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、管理栄養士らの専門チームにより、脳卒中を発症早期から24時間体制で集中的に治療する病床のことです。毎朝カンファレンスを行い、入院患者さん一人ひとりについて、チーム一丸となって治療方針の検証、確認と修正をします。SCUでの治療はt-PA治療と同等の効果があるとされています。

 
                   井上准教授の講演様子

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講演3 脳卒中のリハビリテーション

[講師] 川崎医科大学総合医療センター 
   リハビリテーションセンター 副主任理学療法士 小山 淳司

脳卒中は、罹患すると手足が動かなくなったり、しゃべれなくなったりと多種多様の症状を引き起こし、それが後遺症として残ってしまうことが多い病気です。現在、要介護者の約24%を脳卒中の方が占め、そのうち寝たきりの患者さんの約4割は脳卒中による後遺症とされていることから、これらの症状の軽減をいかに図るかが大切で、脳卒中のリハビリテーション(以下リハビリと略す)は、発症直後から開始するべき重要な治療の一つとされています。

一般的に脳卒中のリハビリは、急性期、回復期、生活期の3つの時期に分けられ、その中で一貫した流れで治療を行っていくことが勧められています。当院は急性期、回復期の2つの時期の患者さんのリハビリが実施できる体制をとっていますが、より早期から行うことの重要性や脳卒中ケアユニット(以下SCU)についての紹介も兼ねて、今回は急性期の部分を主に説明させていただきます。

  


脳卒中の治療においては、様々な職種のスタッフと連携を図ることで、より高い効果を発揮できると言われています。そのため、毎朝の
カンファレンスへの参加や、SCUにおいても専従のリハビリスタッフを中心に看護師と情報共有を図っておりますので、そのあたりについても紹介したいと思います。
脳卒中という病気において、発症して短期間で自宅へ戻れる方は少ないため、多くはリハビリを継続するために回復期リハビリテーション病院(病棟)といったところで自宅復帰などを目指すことになるのですが、どうしても後遺症が残ってしまうことが多い病気です。そのため、自分のもっている能力の中でよりよく生活していこうとすると、本人以外の家族や周りの方の理解、協力がとても大切になってきます。脳卒中のこと、リハビリのことを知ることで、少しでもよりよい生活を送るための一助になればと思います。

 
※当院のリハビリテーションについて

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