脳卒中科

平成25年4月1日、当病院で脳卒中科が開設されました。急性期の脳卒中、いわゆる脳梗塞(脳の血管が詰まる)、脳出血(脳の血管が破れる)を起こして、急に身体的な麻痺が生じたり、言葉の障害や歩行などができなくなった患者さんの治療を行います。また、脳梗塞の原因の究明とともに、その原因に基づき、脳卒中発症・再発予防のために最適な治療を提供しています。心房細動など心疾患を有する患者さんに対しては、抗凝固療法を行います。血管自体に問題がある患者さんに対しては、頸動脈超音波検査、MR angiography、3D CT angiographyさらに脳血管造影検査で詳細な評価を行い、内科的治療(抗血小板薬の投与)または外科的治療(頸動脈内膜剥離術)を検討いたします。高血圧症、糖尿病、脂質異常症など動脈硬化の危険因子に対しても、きめ細かな対応を心がけています。
急性期症例については24時間、365日対応可能です。後遺症に苦しむ患者さんを少しでも減らすことができるよう、熱意をもって脳卒中診療に取り組んでいます。また、医療スタッフからの説明の補足、療養の参考として、当科入院患者さんへ「脳卒中のしおり」(冊子)を配布しています。

診療部長・責任者

担当医一覧

主な対象疾患

脳卒中は、大まかに脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血に分けられます。当科ではそのうち脳梗塞、脳出血(手術を要しないもの)を主な対象疾患としています。また、脳梗塞になる前触れともいわれている一過性脳虚血発作についても積極的に治療の対象とし、脳梗塞に至らないよう可能な限り早期に治療介入しています。

  • 1脳梗塞
    脳梗塞とは、脳の血管が詰まり、脳組織が酸素欠乏や栄養不足に陥り、その状態がある程度の時間続いた結果、その部位の脳組織が壊死してしまったものをいいます。脳梗塞は概ね次の3つに分類されます。

    ①アテローム血栓性脳梗塞
    脳や頸部の比較的太い血管の動脈硬化が、加齢、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙などにより起こり、その部位で血管が詰まってしまったり、血流が悪くなったり、またはそこにできた血栓がはがれて流れていき、さらに先端の脳の血管の一部に詰まってしまう状態です。

    ②心原性脳塞栓症
    心房細動や心臓弁膜症、心筋梗塞などのために心臓の中に血栓ができて、それが脳に流れてきて詰まった状態です。心臓の中で発生する血栓は大きく、それまで正常に流れていた血管内に、突然血栓が詰まって血流が途絶えてしまうため、詰まった血管の先の脳の大部分では、極端に循環が悪くなります。このため梗塞巣は非常に広範囲にわたることが多く、症状は突然起こり、重症なケースが多くなります。

    ③ラクナ梗塞
    主に加齢や高血圧などによる動脈硬化が原因で、脳の深部にある直径が1mmの2分の1~3分の1くらいの細い血管が詰まり、その結果直径が15mm以下の小さな脳梗塞ができた状態です。
  • 2脳出血
    脳出血とは脳内の血管が何らかの原因で破れ、脳のなかに出血した状態をいいます。当科では保存的治療を中心に行い、病状により手術が必要な場合は脳神経外科に依頼します。
  • 3一過性脳虚血発作
    一過性脳虚血発作(TIA)とは、脳に行く血液の流れが一過性に悪くなり、運動麻痺、感覚障害などの症状が現れ、24時間以内、多くは数分以内にその症状が完全に消失するものをいいます。症状が短い時間で消えてしまうため見過ごしてしまいがちですが、この発作のあと治療を受けないままだと、約三分の一の人がいずれ脳梗塞を起こすといわれています。脳梗塞の予防のためにも、この発作が起きた時点で適切な治療を受けることが非常に重要となります。

特徴・特色

脳梗塞の血栓溶解療法を中心とする超急性期治療

2005年にt-PAという薬で脳に詰まった血栓を溶かす治療が日本でも開始されました。ただし、私たちの体の中で脳は非常にデリケートな部分なので、脳の血管が詰まると、すぐに脳は死んでしまいます。この治療も、脳梗塞が起こって4時間30分以内に開始しなければ効果がありません。また、脳梗塞を起こして大幅に時間が過ぎてから治療を開始すると、薬の副作用で脳出血を起こし、さらに重症化する可能性があります。 当院ではt-PA治療を中心に診療を行います。また、細い管(カテーテル)を脳の血管に入れて、血栓を除去したり、吸引したりする方法(脳血管内治療)も行います。

脳卒中ケアユニット(SCU:Stroke Care Unit)の開設

2016年6月1日付でSCUを開設いたしました。詳細は「中央協力部門」のSCUのページをご参照ください。

緻密な脳卒中の診断と専門的治療

脳の血管がどのようにして詰まったのかを診断するために、頭部MRI/CTに加え、各種検査(脳血管造影、全身の造影CT、頸部血管エコー、経頭蓋ドップラー(TCD)、経食道心エコー、下肢静脈エコーなど)を駆使して、患者さんそれぞれの脳梗塞の原因を探ります。原因が判明すれば、より適切な治療につながります。

充実したリハビリテーション

当院ではリハビリテーション専門医、理学療法士、作業療法士、言語療法士といったリハビリスタッフが市内の救急病院の中では非常に充実しております。身体的な麻痺や言語・嚥下障害などに対し入院当日または翌日からリハビリテーションを行い、機能の改善を図ります。

脳卒中チーム医療

脳神経外科・脳卒中科・リハビリ科の医師、看護師、リハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカー、薬剤師、管理栄養士で構成された脳卒中チームで治療に取り組んでいます。毎朝カンファレンスを行い、入院患者さんひとりひとりについて、治療方針の検証、確認と修正をしています。チーム一丸となって、各職種が全力を尽くして患者さんにベストな医療を提供しています。

実績

令和4年4月~令和5年3月

入院患者疾患内訳

脳梗塞 213人
脳内出血 16人
一過性脳虚血発作 9人
クモ膜下出血 1人
その他 8人

治療実績

脳血栓回収術 5例
t-PA静注療法 33例

診療科

部門

専門外来