内視鏡手術用支援機器(ロボット手術支援システム)ダヴィンチ
川崎医科大学総合医療センターでは、低侵襲手術を一層充実させるため、2016年6月25日、ロボット手術システム「da Vinci Xi サージカルシステム」を導入し、手術を開始いたしました。 本システムは、鮮明な三次元画像や人間の手指のように器用に動く鉗子を有しており、従来の腹腔鏡手術以上に、低侵襲かつ精度の高い手術が可能になるとされています。 現在、本システムを用いた手術として、前立腺癌、腎癌、胃癌、直腸癌、大腸癌、肺癌、食道癌、子宮体癌、縦隔腫瘍、心臓弁膜症、膀胱癌などが保険適用となっています。当院では、前立腺癌に対するロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術、直腸切除術、胃切除術、大腸切除術などを実施しています。

ロボット手術支援システム「ダヴィンチ サージカルシステム」とは?
手術の方法は、時代とともに、開腹手術から腹腔鏡下手術に移行してきました。腹腔鏡下手術は、より拡大された術野による正確な手術、出血量の減少、優れた整容性など多くの恩恵をもたらしましたが、鉗子の動きに制限があることや2次元画像下で手術が行われることから、一定の限界があり、その欠点を補う機器として、ロボット手術支援システム 「ダヴィンチ サージカルシステム」が開発されました。
鮮明な拡大3次元画像、多関節を有する鉗子、手ぶれ防止機能などが大きな特徴です。
ダヴィンチ サージカルシステムは、Surgeon Console(サージョンコンソール)Patient Cart(ペイシェントカート)、Vision Cart(ビジョンカート)から構成されています。術者は、鮮明な3次元画像をもとに、サージョンコンソールに装備されたコントローラーを用いて、内視鏡および3本の手を自由に操作して手術を進めていきます。非常に扱いやすい機器であることから、開腹手術や腹腔鏡手術に比べて上達が早く、術者の間で成績に差が出にくいとされています。
日本では、2009年「ダヴィンチS」、2012年には「ダヴィンチSi」、2015年には「ダヴィンチXi」が新たに発売され、当院では2016年に「ダヴィンチXi」を導入しました。

ロボット手術支援システム「ダヴィンチ サージカルシステム」の実績は?
「ダヴィンチ サージカルシステム」を用いた手術が全世界で年間180万件以上行われており、外科や婦人科、泌尿器科を中心に、急速に普及してきています。日本では、泌尿器科領域、特に前立腺癌に対する根治的前立腺全摘術を中心に、年間約3万例程度の手術が行われています。前立腺癌に対する根治的前立腺全摘術は、現在ではロボット手術が主流となっています。
当院の上原医師は、シンガポール総合病院に留学し、ロボット手術の研修を受けた後、岡山大学、我孫子東邦病院でロボット手術の責任者を歴任し、2016年に当院に赴任しました。現在までに800例以上のロボット手術を経験し、ロボット外科学会専門医、ロボット支援手術プロクター認定制度認定医などの資格を有しています。
前立腺癌に対するロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術について
前立腺癌は、胃癌や肺癌と並んで、男性では最もなりやすい癌の一つです。治療法は、進行具合や年齢、合併症などを総合的に判断して決定され、種類も多岐にわたりますが、その一つとして前立腺全摘除術があります。
従来の手術療法として、へそから下を切開して前立腺を摘出し膀胱と尿道を縫い合わせる開腹手術がありますが、前立腺が恥骨の下の奥深いところにあることから見えにくく、手術がやりづらい欠点がありました。その後、大きく開腹せずに、腹部にいくつかの穴を開けて行う腹腔鏡手術が広く普及してきました。その中でも、手術支援ロボットを用いた手術は、より複雑かつ細やかな手術手技ができるようになり、従来の内視鏡手術と比べ、さらに安全かつ負担の少ない手術が可能となっています。
特に、手術後の尿失禁や性機能障害が問題となる前立腺全摘除術においては、ロボット支援手術は、癌の根治のみならず、失禁や勃起能などの機能温存にもいい結果をおよぼすことが期待されています。
泌尿器科部長 上原慎也医師よりコメント

2004年にアメリカで初めてロボット手術を見学し、医師になって最大の感銘を受けました。日本ではロボット手術がなかなか認可されなかったため、手技を身に着けたいとの思いから2007年にシンガポールに留学して以来、長年ロボット手術に携わって参りました。その間、日本での環境も大きく変わり、前立腺癌に対する根治的前立腺全摘術は、ロボット手術が主流となりました。現在までに、前立腺全摘術を中心に800例以上のロボット手術を経験しています。今後は、標準治療としての「ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術」を更に極めてまいりたいと思います。