総合がん診療センター

センター長 瀧川 奈義夫
内科部長(総合内科学4教授)

業務概要

根治を目指す早期がん治療の中心が手術療法であることは、今までどおり変わりありません。また、食道がんや肝臓がんなどの切除に高度な技術を必要とする特定のがん種においても、従来の外科手術を中心とする臓器別診療体制が、診療上有効であることも紛れのない事実であります。しかしながら、専門的医療を希望する現代の患者ニーズに対して、がん薬物療法や緩和医療などの内科的医療分野においては、従来の外科療法を中心とする上述の体制は必ずしも効率的であるとはいえませんでした。例えば、がん医療の中でも放射線治療は以前から臓器横断的な診療体制をとることで、目覚しい成果を挙げてきた歴史があります。現代の専門的がん医療の現場では、手術療法以外のがん薬物療法や緩和医療の分野における臓器横断的な専門的診療体制の構築が最も重要と考えられています。(図1)
つまり、現在では豊かな学識と臨床技能を備えたそれぞれの専門医を中心に多職種で構成される医療チームとして高度な医療を提供することが、患者および患者家族から強く求められています。また特に、がんの診断についても良悪性の判断や原発巣の同定が難しい症例に対処する場合などは、総合内科専門医や放射線診断専門医、内視鏡専門医などを中心にいち早く確定診断を行うことこそが、良好な治療成果に直接結びつきます。このような臓器横断的診療体制とこれまで当院で実践してきた専門性の高い、多職種によるチーム医療を融合させ、がん診療の分野で有効性の高い臨床結果を得るために立ち上げたのが「総合がん診療センター」です。

図1

がん初診外来について

当院総合がん診療センターでは、新たに「がん初診患者さん」と「がん(疑い)患者さん」に対する専門的診療の受け皿を構築する目的で、「がん初診外来」を設立致しました。月曜から金曜までの毎日午前中の腫瘍内科診療枠にがん初診外来専用枠を設けます(月・水・木曜日担当:瀧川、火曜日担当:越智、金曜日担当:山根)。この外来においては、従来のように患者さんが“総合病院内をたらいまわし”されるような不利益は一切ありませんし、また当院「総合がん診療センター」では、がん患者さんの診療に携わるあらゆる診療科が一体となり、患者さんの利益に繋がるスピーディーな診療を心がけ、日夜努力してまいります。最後に、ご開業の先生方また地域医療に貢献されている病院にご勤務の先生方にお願いがあります。「がん」あるいは「がんの疑いのある患者さん」を当院「総合がん診療センター がん初診外来宛」に紹介していただければ、私たちが責任を持って診療にあたりますので、今後とも患者様のご紹介のほど宜しくお願い申し上げます。

がん看護と緩和ケアの提供

看護面においても私たちは新たな取り組みを行っています。がん化学療法部門においては、専門病棟(11階西病棟)と通院治療センター(外来化学療法)を共通の看護体制の下、一体化して看護業務の運営を行っております。これは全国的に見ても稀な取り組みではあり、化学療法を受けている患者さんの入院治療⇔外来治療の間に切れ目のない継続的な看護・診療体制が確立されました。このことは、当院のがん診療における医療の質の向上に大きく貢献しています。
また緩和ケア部門においては、14階東病棟に18床からなる緩和ケア病棟があります。以前から行ってきました当院と近隣のご開業の先生方との緩和ケアネットワークを生かしつつ、終末期患者に対する看取りの場の提供だけに留まらず、地域で施行中の在宅ホスピス事業や地域の外来緩和ケアを行っている患者さんの緊急時入院や専門的緩和医療の提供がスムースに行えるよう、有機的に活用・運営してまいります。


緩和ケア病棟のご案内

緩和ケア病棟入棟審査用紙

院内がん登録

  
「院内がん登録」とは、当院でがんの診断・治療を受けたすべての患者さんについて、がんの診断、治療、予後に関する情報を登録する仕組みです。当院のがん診療の実態を把握し、がん診療の質の向上を図るとともに、研究に役立てます。
登録項目と入力コードは、院内がん登録の標準登録様式を用い、同登録定義で指定された入力コードを用いて登録しています。
また、がん対策情報センターによる研修を受講した院内がん登録の実務担当者を配置し、「全国がん登録」にデータを提出しています。

がん登録件数

 原発部位   2019年   2020年 
90 83
大腸 138 144
肝臓 27 19
167 136
乳房 100 100
食道 25 32
膵臓 29 42
前立腺 107 169
子宮頸部 9 13
子宮体部 12 13
膀胱 36 56
腎臓 16 20
皮膚 31 37
甲状腺 20 23
その他 137 158
合計 944 1045
  

AYA世代(思春期・若年成人)のがん患者さんに対する治療・支援

AYA世代とは

AYA世代とは、Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の意味で、思春期(15歳~)から30歳代までの世代となります。AYA世代は親からの自立や、生活の中心が家庭や学校から社会での活動に移行するなど、大きな転換期を迎える時期です。このような時期にがんと診断されると、心身や生活にさまざまな影響を受けることがあります。また、一般成人のがんに比べて情報が少なく、不安を抱く人も少なくありません。

AYA世代のがんの特徴

日本では、毎年約2万人のAYA世代が、がんを発症すると推定されています。年代別にみると、15~19歳が約900人、20歳代は約4,200人、30歳代は約16,300人です(国立がん研究センター:2017年)。 AYA世代では、小児で発症することが多いがんと、成人で発症することが多いがんの両方の種類が存在するのが特徴です。 15~19歳で発症することが多いがんは、小児がんと同様で、白血病、生殖細胞から発生する胚細胞腫瘍・性索間質性腫瘍、リンパ腫、脳腫瘍、骨腫瘍などがあります。しかし、20歳代では、胚細胞腫瘍・性索間質性腫瘍、甲状腺がんなどが多くなり、30歳代では、乳がん、子宮頸がん、大腸がんなど成人に多いがんが多くなります。中でも子宮頸がんの好発年齢は30歳代で要注意です。

年代別の罹患率が高いがん[全がんに占める割合]
1位 2位 3位 4位 5位
0-14歳
(小児)
白血病
[38%]
脳腫瘍
[16%]
リンパ腫
[9%]
胚細胞腫瘍
[8%]
神経芽腫
[7%]
15-19歳 白血病
[24%]
胚細胞腫瘍
[17%]
リンパ腫
[13%]
脳腫瘍
[10%]
骨腫瘍
[9%]
20-29歳 胚細胞腫瘍
[16%]
甲状腺がん
[12%]
白血病
[11%]
リンパ腫
[10%]
子宮頸がん
[9%]
30-39歳 女性乳がん
[22%]
子宮頸がん
[13%]
胚細胞腫瘍
[8%]
甲状腺がん
[8%]
大腸がん
[8%]
Childhood, adolescent and young adult cancer incidence in Japan in 2009-2011. Japanese Journal of Clinical Oncology 2017; 47: 762-771.

AYA世代のがんに関する正しい情報を探す

がんと診断されると、病気や治療、副作用や後遺症、将来への影響など、多くの心配が出てきます。治療中や治療後の生活、家族や周りの人との関わり方、学校生活や社会生活、病気との向き合い方など不安は尽きないことでしょう。さらに詳しく知るために、自分で情報を調べることもあるでしょう。しかし、情報を調べるときには注意も必要です。がんに関する情報はたくさんありますが、すべてが正しいとは限りません。自分の状況に当てはまらない情報もあります。中には、患者さんやご家族の不安につけこむような情報もあるので注意が必要です。SNSで発信された情報の場合も同様です。
当院ではAYA世代に発症するさまざまながんに対して、腫瘍・血液内科、脳神経外科、整形外科、乳腺内分泌外科、消化器外科そして婦人科、泌尿器科など当該各科の専門医が連携をとりながら対応できる体制をとっています。またセカンドオピニオンも広く承っています。

お問合せ先

AYA世代のがんに関して、気になること、ご相談などあれば「がん相談支援センター」までお問合せください。

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